2014年12月01日
浜松市の協働環境は進化しているか?!
代表の井ノ上です。
IIHOE[人と組織と地球の為の国際研究所]が、2004年から行っている「都道府県、主要市におけるNPOとの協働環境に関する調査」を、今年は全国255自治体と36の中間支援NPOが関わり、N-Pocketも浜松市を担当、市民協働・地域政策課のご協力を得て、協働のしくみや環境について調査しました。
「浜松市の『たねからみのり』は全国に誇れる協働のしくみ」と、川北さんも全国各地のセミナーで名前をあげてくださるほど優れた事業をもつ浜松市ですが、今回の評価はどうだったでしょうか?11月28日に報告会を開きました。
参加者は29名で、磐田市や名古屋市のNPOも参加。行政は浜松市、磐田市、掛川市、静岡県から7名。袋井市は議会の都合で来られなくなり、残念でした。
まずは川北さんから、協働環境の調査指標と評価ポイントについて、全国の様々な事例を取り上げて説明。協働事業の採択、事業、評価について、そのプロセスや市民参加、情報公開をどこまでやっているか?情報も役所に行かなくてもWebで見られるか?
5年前の第4回調査では、都道府県は市町村に比べて圧倒的に進んだ状態でした。それが今回は、政令指定市や中核市は着実に改善が進んでいる様子が見えるのに、県が前回を下回る項目が続出。「新しい公共支援事業」は何だったのか?と言わざるを得ない状況が見えた、ということでした。
浜松市の報告は井ノ上が担当。市の協働推進・地域政策課の方にもご協力をお願いし、双方の視点が伝わるよう工夫して発表に臨みました。
浜松市の協働環境(青線)は、ほぼ全国平均(緑線)を上回っています!
特に、浜松市は協働推進の仕組みについては、前から評価が高い。
しかし、そのプロセスの開示については、市のWebサイトのリニューアルで情報がなくなってしまい、ポイントが下がってしまいました。
全国的にも優れた協働事業として有名な「たねからみのり」事業は、「市民からの事業提案を受け止めるしくみがある」で2回目からずっと満点!
ところが残念なことに、プロセスが変わってしまったことで、「政策協議の場がある」や「振り返りの場があり、制度改善に生かされている」といった項目で評価が下がってしまいました。
しかしながら、市民協働・地域政策課だけでなく、UD・男女共同参画や企画課などの部署でも市民提案事業の枠組みがあり、様々な形で事業提案ができる環境は広がっています。市民協働が根付いてきた表れかもしれません。
課題の現場に近いNPOは、課題解決のための政策提言についても大きな役割を持っています。解決のためのモデル事業を行政との協働で行っていくことが、制度として可能になっていることは素晴らしいことです。
実はN-Pocketも2005年にたねからみのり事業で、福祉相談の一元化の問題について提案。翌年にきちんと予算化されて実施することができました。その間には関係者間で課題を共有し、「公益事業として価値があるか」といったことを議論し、実施されたものです。
その後、振り返り作業もあって、残された課題解決のための協働事業が2年続き、「ニーズのある子ども育ち応援マップ」のWebサイト作成に繋がっています。
そうそう、「みんなのはままつ創造プロジェクト」では、採択された団体が行った事業の振り返りができる機会を設けているんです。クロージングミーティングと名付けられた報告会が公開で行われており、その場を共有した複数の団体がコラボして新しい提案が生まれたり、次年度の事業の進め方が改善されたりしています。報告会などを公開することにより、協働事業が進化していくよい事例だと思います。
また、協働事例、評価の公開(市と多様な主体との協働に関する実績評価)についても6点満点です。Web上で細かく公開されています。
指定管理者制度については、選定結果についても誰が選定委員だったかもWebに公開されています。ただ、市民委員はいるけれど、公募ではないのが残念。
今回新しい設問となった地域自治や公共サービスを地域住民が担う「小規模多機能自治」の動きについては、市内2カ所(和地・舞阪)の中学校区程度の範囲の中に存在する地縁団体やNPOなどが連携する組織「地区コミュニティ協議会によるまちづくりを進める事業(地区コミュニティ振興モデル事業)が今年度開始されたということで3点。
最後に、浜松市の協働担当者より「評価が低くなってしまった情報公開と協働プロセスについては改善していきたい。NPO法が施行されて15年経ち、協働を所管する部署で市の協働事業全般を担うのではなく、各部署において協働が社会課題を解決するための一つのツールとして活用され始めている。その象徴が浜松の総合計画で、都市の将来像を『市民協働で築く“未来へかがやく創造都市・浜松”』としている。」とコメントいただきました。
浜松市は、実は職員向けの協働推進のテキストもあるんです。(平成23年度第4回浜松市市民協働推進委員会の資料1にあるのを、たまたま発見。なかなか見つからないのはもったいない!)
N-Pocketからは、3点を提案しました。
1)課によって協働の度合が異なる。以前あった「庁内協働推進連絡会」で各課を横につなぐしくみを復活した方がよいのでは。
2)全国的に市民協働の先進事例「たねからみのり」で、政策協議の場と総括の場がなくなったことは残念。協働を学ぶ場のみならず、情報公開と市民参画を必ず可能にする浜松市の優れたしくみとして、他の事業に根付くよう広くアピールしてほしい。
3)NPOとしては、しくみの見直しを提案するなど自立的な関わりをもっとする必要がある。そのための力をもっとつけなければならない。
協働を担っていた担当部局の手を離れ、形を変えていったゆえに今回の協働環境調査の評価において点数に結び付かなかった部分もあります。
参加された静岡県の方からも「静岡県の評価が下がったのは、分権と行革が影響している。民間からの協働提案も減っており、市町との協働を勧めることも増えた。また、協働はプロセス重視で労力もかかることから、行革の観点からは効率が悪いと捉えられてしまう。」といった内部事情も意見として上がりました。
協働をすすめたい!という気持ちはNPO・行政の双方が持っているのでしょうが、「協働」という掛け声が大きくかかっていた10年前とは、ずいぶん環境が違ってきているのを実感しました。NPOとしてどのように動くべきか、非常に難しい宿題をいただいた気がします。
お忙しい中、しかも花金の夜にご参加いただいた行政、議員、NPOのみなさま、どうもありがとうございました。
IIHOE[人と組織と地球の為の国際研究所]が、2004年から行っている「都道府県、主要市におけるNPOとの協働環境に関する調査」を、今年は全国255自治体と36の中間支援NPOが関わり、N-Pocketも浜松市を担当、市民協働・地域政策課のご協力を得て、協働のしくみや環境について調査しました。
「浜松市の『たねからみのり』は全国に誇れる協働のしくみ」と、川北さんも全国各地のセミナーで名前をあげてくださるほど優れた事業をもつ浜松市ですが、今回の評価はどうだったでしょうか?11月28日に報告会を開きました。
参加者は29名で、磐田市や名古屋市のNPOも参加。行政は浜松市、磐田市、掛川市、静岡県から7名。袋井市は議会の都合で来られなくなり、残念でした。
まずは川北さんから、協働環境の調査指標と評価ポイントについて、全国の様々な事例を取り上げて説明。協働事業の採択、事業、評価について、そのプロセスや市民参加、情報公開をどこまでやっているか?情報も役所に行かなくてもWebで見られるか?
5年前の第4回調査では、都道府県は市町村に比べて圧倒的に進んだ状態でした。それが今回は、政令指定市や中核市は着実に改善が進んでいる様子が見えるのに、県が前回を下回る項目が続出。「新しい公共支援事業」は何だったのか?と言わざるを得ない状況が見えた、ということでした。
浜松市の報告は井ノ上が担当。市の協働推進・地域政策課の方にもご協力をお願いし、双方の視点が伝わるよう工夫して発表に臨みました。
浜松市の協働環境(青線)は、ほぼ全国平均(緑線)を上回っています!
特に、浜松市は協働推進の仕組みについては、前から評価が高い。
しかし、そのプロセスの開示については、市のWebサイトのリニューアルで情報がなくなってしまい、ポイントが下がってしまいました。
全国的にも優れた協働事業として有名な「たねからみのり」事業は、「市民からの事業提案を受け止めるしくみがある」で2回目からずっと満点!
ところが残念なことに、プロセスが変わってしまったことで、「政策協議の場がある」や「振り返りの場があり、制度改善に生かされている」といった項目で評価が下がってしまいました。
しかしながら、市民協働・地域政策課だけでなく、UD・男女共同参画や企画課などの部署でも市民提案事業の枠組みがあり、様々な形で事業提案ができる環境は広がっています。市民協働が根付いてきた表れかもしれません。
課題の現場に近いNPOは、課題解決のための政策提言についても大きな役割を持っています。解決のためのモデル事業を行政との協働で行っていくことが、制度として可能になっていることは素晴らしいことです。
実はN-Pocketも2005年にたねからみのり事業で、福祉相談の一元化の問題について提案。翌年にきちんと予算化されて実施することができました。その間には関係者間で課題を共有し、「公益事業として価値があるか」といったことを議論し、実施されたものです。
その後、振り返り作業もあって、残された課題解決のための協働事業が2年続き、「ニーズのある子ども育ち応援マップ」のWebサイト作成に繋がっています。
そうそう、「みんなのはままつ創造プロジェクト」では、採択された団体が行った事業の振り返りができる機会を設けているんです。クロージングミーティングと名付けられた報告会が公開で行われており、その場を共有した複数の団体がコラボして新しい提案が生まれたり、次年度の事業の進め方が改善されたりしています。報告会などを公開することにより、協働事業が進化していくよい事例だと思います。
また、協働事例、評価の公開(市と多様な主体との協働に関する実績評価)についても6点満点です。Web上で細かく公開されています。
指定管理者制度については、選定結果についても誰が選定委員だったかもWebに公開されています。ただ、市民委員はいるけれど、公募ではないのが残念。
今回新しい設問となった地域自治や公共サービスを地域住民が担う「小規模多機能自治」の動きについては、市内2カ所(和地・舞阪)の中学校区程度の範囲の中に存在する地縁団体やNPOなどが連携する組織「地区コミュニティ協議会によるまちづくりを進める事業(地区コミュニティ振興モデル事業)が今年度開始されたということで3点。
最後に、浜松市の協働担当者より「評価が低くなってしまった情報公開と協働プロセスについては改善していきたい。NPO法が施行されて15年経ち、協働を所管する部署で市の協働事業全般を担うのではなく、各部署において協働が社会課題を解決するための一つのツールとして活用され始めている。その象徴が浜松の総合計画で、都市の将来像を『市民協働で築く“未来へかがやく創造都市・浜松”』としている。」とコメントいただきました。
浜松市は、実は職員向けの協働推進のテキストもあるんです。(平成23年度第4回浜松市市民協働推進委員会の資料1にあるのを、たまたま発見。なかなか見つからないのはもったいない!)
N-Pocketからは、3点を提案しました。
1)課によって協働の度合が異なる。以前あった「庁内協働推進連絡会」で各課を横につなぐしくみを復活した方がよいのでは。
2)全国的に市民協働の先進事例「たねからみのり」で、政策協議の場と総括の場がなくなったことは残念。協働を学ぶ場のみならず、情報公開と市民参画を必ず可能にする浜松市の優れたしくみとして、他の事業に根付くよう広くアピールしてほしい。
3)NPOとしては、しくみの見直しを提案するなど自立的な関わりをもっとする必要がある。そのための力をもっとつけなければならない。
協働を担っていた担当部局の手を離れ、形を変えていったゆえに今回の協働環境調査の評価において点数に結び付かなかった部分もあります。
参加された静岡県の方からも「静岡県の評価が下がったのは、分権と行革が影響している。民間からの協働提案も減っており、市町との協働を勧めることも増えた。また、協働はプロセス重視で労力もかかることから、行革の観点からは効率が悪いと捉えられてしまう。」といった内部事情も意見として上がりました。
協働をすすめたい!という気持ちはNPO・行政の双方が持っているのでしょうが、「協働」という掛け声が大きくかかっていた10年前とは、ずいぶん環境が違ってきているのを実感しました。NPOとしてどのように動くべきか、非常に難しい宿題をいただいた気がします。
お忙しい中、しかも花金の夜にご参加いただいた行政、議員、NPOのみなさま、どうもありがとうございました。
Posted by ぽけ子 at 17:28│Comments(0)
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