2018年05月24日

静岡県西部8自治体・協働環境調査

法人会幹事会メンバー・N-pocket代表の井ノ上です。
一昨年立ち上がった静岡県西部NPO法人会の今年の活動は、「西部8自治体・協働環境調査」の実施でした。県を含む8自治体のNPO担当職員にヒアリングを行ったのです。

「協働の意義」については、「異なる主体がそれぞれの強みを発揮してより効果的に事業を進めることができるしくみ」とされ、どの自治体も一致していますが、具体的に何を「協働」とするかについてはバラバラでした。
どんな行政事業でもそこに関わる相手は、みな協働相手と言い切る自治体もある一方、「単に行政の要求に相手が応えるだけの委託」は協働事業とは呼ばないという市もありました。また、「協働まちづくり事業(委託・補助・連携・地域協働の4種類)」と名付けた事業のみを指す自治体もありましたから、多くの場で使われている「協働」という言葉の定義については、自治体ごとにズレがあることを知っておく必要があります。

最近は行政から事業を受託し、雇用されたスタッフもいる事業型NPOが増えています。またウェブ上に「市と多様な主体との協働に関する実績・評価」(浜松市)や「NPO等との協働に関する調査」(静岡県)など、協働の具体的な内容が公開されているので、ヒアリングでは委託先の選定方法や契約の仕方、仕様書の作り方、事業費、評価などに関わった話も伺いました。

NPO法ができた当時はNPOを育てるという目的もあり、行政側はNPOの強みを発揮して行ってほしい事業ならば、NPOに対し優先的に事業提案型で委託先を選定していました。
今は、営利・非営利の区別なくNPOを一事業者の位置づけで考えている自治体もあります。どうしてもNPO向きと考えられる事業は、非営利団体に限るという条件付きで公募を行うとのこと。

驚いたのは、NPO法人に委託をだした事例がない市もあったこと。潤沢な収入があって直営事業が多いということが大きな理由でしたが、そのために行政側の長年培われた仕事リズムと、市民の行政に依存する気持ちの強さに改善がみられないことが課題になっているようでした。

委託事業費の人件費単価については、国交省の公共単価を用いている自治体もありましたが、臨時職員や非常勤職員の単価(832円~1300円程度)で計算している自治体が多く、受託したNPOの専門性に応じた適切な人件費単価をきちんと用意しているところはありませんでした。

間接経費についても基準はなく、財務課次第という自治体もありましたが、K市のNPO支援センター運営事業は、委託でもよくある単年度契約ではなく、債務負担行為として3年継続できる委託にしており、3割程度の間接経費を含んで事業費を算出したそうです。

「協働」という言葉が入った条例は、浜松市、磐田市、掛川市の3自治体、指針については湖西市、浜松市、袋井市、静岡県の4自治体が作っていました。
菊川市と御前崎市は指針も条例もないものの、総合計画の中に協働という言葉が盛り込まれ、菊川市では協働を推進する庁内ワーキンググループもありました。

地縁で活動する自治会や地区社協と、テーマ性をもって動く志縁のNPO、企業、学校など多様な主体が集まり、地域の課題を共有しながら、まとまった予算に優先順序をつけて、地域住民が自立的にまちづくりを行う「まちづくり協議会」が動き出している事例も聞くことができました。
このように行政と市民との協働は当たり前となっており、すでに今の協働を超える形を模索する自治体の姿も見えました。

NPO法人会としては、定性的評価をしていくノウハウや、専門性を人件費単価に繋げる根拠をもつと同時に、間接経費に関わるフルコストリカバリーの考え方を社会で共有していく活動も必要だと考えています。

N-Pocketも自助、共助、公助が適切なバランスでまちづくりが行われるよう、現場活動と共に提言活動を行っていく必要があると考えています。   

Posted by ぽけ子 at 14:54Comments(0)静岡県西部NPO法人会