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2015年05月29日

どう選ぶ?NPO法人、一般社団法人、一般財団法人

事務局長の小林です。
昨日は東京で開かれた「非営利法人格選択に関する実態調査の結果報告シンポジウム」に登壇してきました。これは公益法人協会と日本NPOセンターが行った調査の報告会です。
こんなマニアックな話題にもかかわらず汗、全国から70人ほどが集まりました。

奥から2番目が私

非営利の法人には、特定非営利活動法人(NPO法人)の他にも、社団法人や財団法人があります。
NPO法が議員立法で作られたのが1998年、当時は社団や財団になるのは高いハードルでした。2008年に公益法人制度改革で、一般社団・公益社団、一般財団・公益財団となり、一般法人はハードルを下げて作りやすくして、厳しい基準をクリアしたところが公益法人という2階建ての制度になりました。

まる(青)NPO法人の設立は無料でできますが、メンバーは10人以上必要で、認証・登記まで3~4ヶ月かかります。その後も年度ごとに事業報告を出す義務があり、その情報は内閣府のサイトで公開されます。
まる(青)一般社団法人は、メンバーは2名から、設立は公証人の定款認証と登記だけ。登録免許税など11万円がかかります。分野の指定がないので、自由度の高い活動を行うことが可能。
まる(青)一般財団法人は、純資産が300万円以上、3人以上の評議会がいりますが、設立は社団と同じく簡便です。

税金は、一般社団の「非営利徹底型」を選べば、NPO法人と同じ「収益事業のみ課税」となるため、最近は、非営利活動を行う団体がNPOではなく、社団を選ぶケースも増えています。特に、東北の被災地支援ではスピーディーに活動を行うために社団が多数できたとききます。

しかし、一般社団・一般財団は所轄庁がないので、どこにどんな団体があるかがわかりません。今回の調査は、Webなどで存在が確認できた一般法人を対象に行ったので、「見えている法人で、返事を出した法人」という偏りは否めませんが、これまで見えなかった実態の把握としては貴重なデータです。


さて、シンポジウムでは、一般社団、一般財団、NPO法人がそれぞれ法人格を選んだ理由、メリット・デメリットを語りました。
「収益事業を主にしたくて社団」「経営の安定とガバナンスを考えて財団」「多様な人々の参加にこだわってNPO」「非営利のアピールと継続する組織という決意表明としてNPO」…目指す方向性の違いが選択の違いになっていることが見えました。

デメリットとしては、「NPOに比べて社団は知名度が低い?」「社団だと非営利の部分が理解されにくい」「社団だとビジネス面の支援や貸付が受けられないことがある」「NPOは行政の関与があって自由に活動しにくい」という話がありました。

調査では、法人格を取った理由のダントツ一位は、社団もNPOも「社会的信用を得るため」ですが、外から見て「NPO法人」や「社団法人」は果たして信頼を得られているのでしょうかはてな

社団は情報公開の義務がないので、Webなどで自主的に事業報告や理事などを公開しない限り、どんな人たちがどんな事業をやっているかが全く見えません。しかも、設立しやすいということは、いい加減な団体でも参入できてしまうということ。

では、情報公開がされているNPOは信頼がおけるのか?というと、浜松市では事業報告を出していない団体が25%、4団体に1つは義務を果たしていない現状があります。ガーン
NPO法人は全国で5万を超えましたが、これだけあると法人も玉石混淆になり、NPOのイメージやネームバリューも当初とは違うものになってきたと感じています。

登壇された方たちは、「社会的信用は活動実績で示すもの」と異口同音に言ってましたが、厳しい審査を経た公益法人や認定法人は別として、「法人格=信用、ではない」ということ。
だからこそ、社団・財団に義務はなくても、積極的に情報公開してほしいと思います。NPO法人は言わずもがな!

ガバナンスについては、総会の議決が優先されるNPOは乗っ取られる危険もあるし、不安定かもしれない。でも、N-Pocketは多様な人々の思いを集めて立ち上げたNPOなので、色々議論して自分たちで選択する「参加のプロセス」を重視してきたし、手はかかっても「開かれた組織」であることにこだわっています。
さらに言えば、NPO法人制度は行政に「監理」されるものでなく、市民による「自治」を促進し、多くの市民の参加を得て「社会を変える力」にしていくための制度だったはず…。

現状では、法人格は目的や方向性によって合致するものを選べばいいと思うし、全く異なる経緯で作られた法制度を一本化するとしても、まだまだ議論が必要です。でも、もしNPO法を改正するなら、設立時の縦覧はなくすか短縮し、2年分の予算・事業計画も1年分にするなど、設立手続きは簡略化してほしいと思います。

もう少し掘り下げた考察は、パネリストで登壇した「とちぎユースサポーターズネットワーク」岩井さんのブログに詳しく書かれているので、そちらもお読みください。

N-Pocketもきちんと公開していますよ(今年は特に早い!)。→事業報告役員・スタッフ


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